カプリスのかたちをしたアラベスク

このブログはフィクションです。詳しくはプロフィール参照。

【最近のできごと】

文学ムック「たべるのがおそい」の編集などを手がける西崎憲主宰の電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」より
ぼくの初の単著となる短編集「コロニアルタイム」が発売されました。

また同レーベルより発売中のアンソロジー
「ヒドゥン・オーサーズ」

にも短編を寄稿しています。
この本は新潮社が発行している雑誌「波 2017年7月号」で
王様のブランチでおなじみの書評家・滝井朝世さんにも取り上げていただいています。


弱い恋愛と絶対化されるアマチュアリズム──町屋良平『しき』(文藝2018年夏号)

もうじきぼく自身が小説を書きはじめて10年くらい経ち、それでもまだたかだか10年程度でしかないとはいえ、いわゆる筆歴がながくなってくると「いつまで小説を書けるんだろう」みたいな疑問がふと脳裏をよぎる。小説を書ける、というのは小説でまともなお金…

「エモい」という記号化された感情とWEBメディアの文章/『でも、ふりかえれば甘ったるく(PAPER PAPER)』

「これエモくないすか?」 ということをいわれ、 「なにそれ?」 と返したのは、たぶん2年か3年かまえのことだったとおもう。 ことばはいつも知らないうちに次々とどこかから生まれ、ある程度パッケージ化された状態で情弱のぼくの手元に届くわけだけれど、…

フリーライターの「てめぇには1分の価値すらねぇよ」問題について

これまで「業務は発生した瞬間になにをいつまでにするかを即座に決め、先方と共有する」ということが働く人間の嗜みだと洗脳されてきたが、フリーライターになって世の人々は「なにをいつまでにするかを絶対に明言しないようにして、決して弱みを軽々しく先…

2つの怪文書/おばけ家族はいつから家族か

さきにまず今週の寄稿の紹介を。 『リキッド・サーベイランス』についての怪文書 まずテクノロジーやカルチャー系の話題を多く取り扱っているWEBメディア『UNLEASH』さんに社会学者の対談本の書評(?)らしき怪文書を掲載していただきました。 unleash.tokyo…

学歴イジりについてのあれこれ

さいきんは書きたいことをほぼ寄稿記事に書かせていただいていて宣伝ばかりで恐縮なのだけれど、就活サイト『ワンキャリア』さまに、コラムを掲載していただいた。 www.onecareer.jp 一部、話を盛っている箇所もあるのだけれど、ほぼ実話をこのコラムで書い…

文学作品の書評寄稿についておもうこと/「名前があるひと」になること

UNLEASHさまに、コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』の書評を寄稿しました。 unleash.tokyo 地下鉄道 posted with ヨメレバ コルソン ホワイトヘッド,Colson Whitehead 早川書房 2017-12-06 Amazonで見る Kindleで見る 2月中になんとしてでもこの書評の受…

ぼくらはさいしょから生き死にを知っているのかもしれなかった

蓼食う本の虫さんに吉村萬壱氏の作品について、批評のような文章を掲載していただきました。 tadeku.net 吉村さんとは大阪の文学バー『リズール』で5年ほどいっしょに朗読会イベントの受付をしていた間柄(!?)というかんじで仲良くさせてもらっていたけ…

遠藤周作がセンター試験で出題された思い出とその周辺の話

この一週間で2本、遠藤周作の作品の書評を寄稿した(『海と毒薬』、『沈黙』)。 ■海と毒薬/遠藤周作:あらすじ&書評『<何が>彼らを殺したか』 ■沈黙/遠藤周作:あらすじ&書評「奇跡なきこの世界で我々が考えうること」 遠藤周作で記憶に残っているこ…

ライトノベルのタイトルに使われている単語を統計分析でぶん回してみた(ウォーミングアップ編)

普段は自宅でキーワードライティングとかそういうやつを書く「記事ドカタ」をしているのだけど、「キーワード3つで40字以内でタイトルつけろ!」という注文がめっちゃ多い。 www.waka-macha.com でも、常識的に考えて40字の中に指定情報3つって割合的に多す…

「クソアニメ」とは何か?――表現形式としての「クソアニメ」/アニメ『ポプテピピック』評

今日はひさびさにアニメの話をします。 目次 『聖剣伝説レジェンド・オブ・マナ』とアニメ『ポプテピピック』 アニメを「クソアニメ」にするものとは 変化する「クソ」という評価 「クソ」への偏愛 アニメ『ポプテピピック』の「わたし性」の喪失 創作物の「…

【書評】若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(芥川賞受賞作)/「思考の言語」と「体験と肉声」

※このエントリーには若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」の感想を書いていますが、ネタバレはありません。というか、ネタバレ云々の小説じゃないです。 満二十四歳のときに故郷を離れてかれこれ五十年、日常会話も内なる思考の言葉も標準語で通してきたつ…

とくべつじゃないものを「とくべつ」とみなすこと。

あけましておめでとうございます、というにはすこしばかり遅くなってきて、いまさら正月の話をするのはことし一年の抱負とかそういう「これから」なかんじじゃなく、「これまでの2018年」に近い印象を持ってしまう。 新年とかクリスマスとか節分とかバレンタ…

「ノルウェイの森(村上春樹)」の英訳を再翻訳してみた。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫) posted with ヨメレバ 村上 春樹 講談社 2004-09-15 Amazonで見る Kindleで見る 年の瀬。 本年も、弊ブログ「カプリスのかたちをしたアラベスク」をお読みいただき、ありがとうございました。 ブログの方針については常日頃…

大江健三郎と村上春樹はなぜ同じ主題を「書き直し続ける」のか?/オブセッションと〝自己模倣〟

イーヨーにとって、はじめて父親が死ぬということが、自分にもわかる問題になった、ということだったのじゃないか? 確かにイーヨーはきわめて悪かった、悪いふるまいをした、ということではあるんだけれども、と僕はしばらく考えた上で妻に話した。それでも…

電子書籍ってどうよ?Kindle Unlimitedで読めるオススメの小説・ノンフィクションを紹介しながら電子書籍市場の話をするよ!【随時更新】

こんにちはこんばんはおはようございます。まちゃひこです。 今回は「Kindle Unlimited」を中心とした電子書籍のお話です。 電子書籍についての諸々の感想は後述したいと思うのだけれど、ぼく自身はここ1年ほどは電子書籍での購入を増やしている。 小説やノ…

だれも教えてくれない純文学とエンタメ小説(大衆文学)のちがいと、純文学が売れない理由についてあえて考えてみた。

フリーランスで仕事をしていくにあたり「読書」を軸にしようと決めた以上、ぼくはじぶんの読書だけは信じ抜かなくちゃならなくて、それがもしできなくなってしまったならばなにもかもやめなくてはならない。そんなことをよくおもう。 ただその一方でじぶん自…

【書評】滝口悠生「高架線」/本当のことと語り手への信頼

でもさ、と私は田村の話を遮った。僕の文通相手はね、本当は存在していないんですよ。いや、あの写真の男……男か、女か、何と言ったらいいかわかんない、僕は男と言ってしまうけれども、あの人はもちろんどこかに実在しているけど、僕が文通をしていた相手は…

【お知らせ】惑星と口笛ブックスから短編集「コロニアルタイム」が発売されました。

本日、前々からTwitterでお知らせしていたぼくの短編集「コロニアルタイム」が、作家・翻訳家・作曲家・編集者というさまざまな顔を持つ西崎憲氏が主宰するレーベル「惑星と口笛ブックス」よりKindleで発売されました。 コロニアルタイム (惑星と口笛ブック…

【書評】はあちゅう「通りすがりのあなた」/世界とわたしの鬼ごっこ

※本エントリーには、はあちゅうの短編小説集「通りすがりのあなた」のネタバレはありませんのでご安心ください。 通りすがりのあなた posted with ヨメレバ はあちゅう 講談社 2017-09-27 Amazonで見る Kindleで見る 書きにくい書評というのはふたつあって、…

文芸誌を読むということ/おもしろい・おもしろくないを言い切る尊さ

長編を読み切る時間と気力がないのだけれど(その割に実入りが悪い)、いちおう毎日本は読んでるので、きょうは最近読んだ文芸誌の短編・中編の感想を書きたいとおもう。 読んだのは「文藝2017年冬号」「たべるのがおそいvol.4」だ。 文芸 2017年 11 月号 […

「何者でもないわたしたちという誰か」のこと〜ノーベル賞、カズオ・イシグロ、現代世界文学とオートフィクション、母国語至上主義について

きのう今年のノーベル文学賞がカズオ・イシグロに決まったというしらせをきいて、あまりにもびっくりして声が出てしまった。 もちろんカズオ・イシグロはいうまでもなく優れた作家であることはわかっていたのだけれども、2年連続英語圏の受賞ではないだろう…

「回遊人(吉村萬壱)」感想/死者の居場所

回遊人 (文芸書) posted with ヨメレバ 吉村萬壱 徳間書店 2017-09-26 Amazonで見る Kindleで見る 彼女の夫の居る時空と私が居るこの時空とは、何がどう違うのだろうか。私は一体、本当はどこにいるのか。確かな事は、女将の夫は既に死んだという事だ。その…

【翻訳短編】スコット・フィッツジェラルド「祝福」(原題:Benediction)

フィッツジェラルドの短編「Benediction」を翻訳しました。 今回は、Twitter上でお友だちから翻訳リクエストをいただいたのをきっかけに取り組んだ感じですが、なにか「これを訳して!」というのがあれば、お気軽にお問い合わせいただけると嬉しいです。モチ…

懐かしさ、あるいは重ね書きされた世界のリアリズム/映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」感想

※このレビューはアニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?上から見るか?」の内容についての言及を含みます。 岩井俊二原作のドラマ作品が、「物語シリーズ」や「魔法少女まどか☆マギカ」などで有名な制作会社シャフトによって映画化された。シャフトは好き…

温又柔「真ん中の子どもたち」感想/「アイデンティティの安全」を生きるわたしたちの無自覚な暴力

第157回芥川賞の選評が公開された。 文藝春秋 2017年 09 月号 [雑誌] posted with ヨメレバ 文藝春秋 2017-08-10 Amazon Kindle 芥川賞の特殊なところはなによりもその影響力なのだけれど、それ以外にも「選考委員全員が現役作家」というものもある。選考委…

「囚われの島(谷崎由依)」感想/強迫観念と寓意、物語という感覚器官

囚われの島 posted with ヨメレバ 谷崎由依 河出書房新社 2017-06-12 Amazonで見る Kindleで見る 時間の感覚、そして空間の感覚。 見えなくなるにつれて、わたしはわたしの内側に世界の地図を記録しはじめる。 平面のそれではなく、絵ではなく、世界そのもの…

在宅パパがフィーリングで牛すじ煮込みをつくったのでレシピを公開するよ

ブログといえば料理ということで、ぼくの手料理でもアップしてみる。 うちはぼくが在宅ライターで嫁氏が会社員という家庭なので、平日の家事諸々と子育てはぼくがやっている。しかしこれがなかなかめんどうくさい家庭外でのコミュニケーションを生んでいて、…

【翻訳短編】H. G. ウェルズ「新星(The Star)」

古典SFの大家、ウェルズの短編「The Star」を翻訳しました。 まだプロトタイプな感じは否めないですが、お楽しみいただければ幸いです。これから定期的に古典短編の翻訳を公開していきたいと思っています。 3つくらい翻訳のストックがたまったら解説もつけ…

「ヒドゥン・オーサーズ(惑星と口笛ブックス)」についての雑感/自由と不自由は相反しない

このブログで何度も宣伝してきた「ヒドゥン・オーサーズ」という電子書籍アンソロジーが発売されてもうじき3ヶ月になる。 小説を書きはじめたのは23歳の夏くらいで、はじめはネットの小説投稿サイトでちらほら短編を書いていて、それが気がつけば文学賞に応…

小学生のころからカブトムシのかっこよさが一貫してわからない

夏といえば虫とり、というのがちびっ子たちのあいだでは定番で、幼少期を瀬戸内海の島の山奥で育ったぼくとてやはりこの時期になるとよく虫をとった。先日、母親が近所のおばちゃんから「おいしい肉」をもらってそれをわざわざ神戸にあるうちまで持ってきて…