カプリスのかたちをしたアラベスク

このブログはフィクションです。詳しくはプロフィール参照。

【最近のできごと】

文学ムック「たべるのがおそい」の編集などを手がける西崎憲主宰の電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」より
ぼくの初の単著となる短編集「コロニアルタイム」が発売されました。

また同レーベルより発売中のアンソロジー
「ヒドゥン・オーサーズ」

にも短編を寄稿しています。
この本は新潮社が発行している雑誌「波 2017年7月号」で
王様のブランチでおなじみの書評家・滝井朝世さんにも取り上げていただいています。


読書

「作家になる」とはどういうことか?──マンガ「ものするひと(オカヤイヅミ)」

「ぼくも小説、書いてみたいんですよ」 飲み屋かなにかでたまたま話すことになった男性にこう言われたある作家はこう返したという。「じゃあ、あなたが持っているそのiPhoneで今から書き始めたらいいじゃないですか」 今日の話は、いってしまえばこのやりと…

読書のことを「インプット」とかいっちゃう連中は眼から血が出るまで読み返せ──乗代雄介『生き方の問題』(群像2018年6月号)

※このエントリーには乗代雄介『生き方の問題』のネタバレが含まれています 一つ口惜しいのは、貴方が覚えていて僕が覚えていなかったことを、今は書くわけにはいかないということだ。それらは一年前に貴方が僕に話してくれた出来事として、左に無限に続く余…

ぼくらがセックスできなければ結婚していただろうか?──こだま『夫のちんぽが入らない』書評

※このエントリーにはこだま『夫のちんぽが入らない』のネタバレを含みます。 昨日の夜、ゴールデンウィークに登山に出かけて遭難してしまった親子が発見されたというニュースをみた。県警のヘリコプターが見つけたそのとき、親子は覆いかぶさるようにして山…

弱い恋愛と絶対化されるアマチュアリズム──町屋良平『しき』(文藝2018年夏号)

もうじきぼく自身が小説を書きはじめて10年くらい経ち、それでもまだたかだか10年程度でしかないとはいえ、いわゆる筆歴がながくなってくると「いつまで小説を書けるんだろう」みたいな疑問がふと脳裏をよぎる。小説を書ける、というのは小説でまともなお金…

「エモい」という記号化された感情とWEBメディアの文章/『でも、ふりかえれば甘ったるく(PAPER PAPER)』

「これエモくないすか?」 ということをいわれ、 「なにそれ?」 と返したのは、たぶん2年か3年かまえのことだったとおもう。 ことばはいつも知らないうちに次々とどこかから生まれ、ある程度パッケージ化された状態で情弱のぼくの手元に届くわけだけれど、…

遠藤周作がセンター試験で出題された思い出とその周辺の話

この一週間で2本、遠藤周作の作品の書評を寄稿した(『海と毒薬』、『沈黙』)。 ■海と毒薬/遠藤周作:あらすじ&書評『<何が>彼らを殺したか』 ■沈黙/遠藤周作:あらすじ&書評「奇跡なきこの世界で我々が考えうること」 遠藤周作で記憶に残っているこ…

ライトノベルのタイトルに使われている単語を統計分析でぶん回してみた(ウォーミングアップ編)

普段は自宅でキーワードライティングとかそういうやつを書く「記事ドカタ」をしているのだけど、「キーワード3つで40字以内でタイトルつけろ!」という注文がめっちゃ多い。 www.waka-macha.com でも、常識的に考えて40字の中に指定情報3つって割合的に多す…

【書評】若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(芥川賞受賞作)/「思考の言語」と「体験と肉声」

※このエントリーには若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」の感想を書いていますが、ネタバレはありません。というか、ネタバレ云々の小説じゃないです。 満二十四歳のときに故郷を離れてかれこれ五十年、日常会話も内なる思考の言葉も標準語で通してきたつ…

大江健三郎と村上春樹はなぜ同じ主題を「書き直し続ける」のか?/オブセッションと〝自己模倣〟

イーヨーにとって、はじめて父親が死ぬということが、自分にもわかる問題になった、ということだったのじゃないか? 確かにイーヨーはきわめて悪かった、悪いふるまいをした、ということではあるんだけれども、と僕はしばらく考えた上で妻に話した。それでも…

電子書籍ってどうよ?Kindle Unlimitedで読めるオススメの小説・ノンフィクションを紹介しながら電子書籍市場の話をするよ!【随時更新】

こんにちはこんばんはおはようございます。まちゃひこです。 今回は「Kindle Unlimited」を中心とした電子書籍のお話です。 電子書籍についての諸々の感想は後述したいと思うのだけれど、ぼく自身はここ1年ほどは電子書籍での購入を増やしている。 小説やノ…

だれも教えてくれない純文学とエンタメ小説(大衆文学)のちがいと、純文学が売れない理由についてあえて考えてみた。

フリーランスで仕事をしていくにあたり「読書」を軸にしようと決めた以上、ぼくはじぶんの読書だけは信じ抜かなくちゃならなくて、それがもしできなくなってしまったならばなにもかもやめなくてはならない。そんなことをよくおもう。ただその一方でじぶん自…

【書評】滝口悠生「高架線」/本当のことと語り手への信頼

でもさ、と私は田村の話を遮った。僕の文通相手はね、本当は存在していないんですよ。いや、あの写真の男……男か、女か、何と言ったらいいかわかんない、僕は男と言ってしまうけれども、あの人はもちろんどこかに実在しているけど、僕が文通をしていた相手は…

【書評】はあちゅう「通りすがりのあなた」/世界とわたしの鬼ごっこ

※本エントリーには、はあちゅうの短編小説集「通りすがりのあなた」のネタバレはありませんのでご安心ください。 通りすがりのあなた posted with ヨメレバ はあちゅう 講談社 2017-09-27 Amazonで見る Kindleで見る 書きにくい書評というのはふたつあって、…

文芸誌を読むということ/おもしろい・おもしろくないを言い切る尊さ

長編を読み切る時間と気力がないのだけれど(その割に実入りが悪い)、いちおう毎日本は読んでるので、きょうは最近読んだ文芸誌の短編・中編の感想を書きたいとおもう。 読んだのは「文藝2017年冬号」「たべるのがおそいvol.4」だ。 文芸 2017年 11 月号 […

「何者でもないわたしたちという誰か」のこと〜ノーベル賞、カズオ・イシグロ、現代世界文学とオートフィクション、母国語至上主義について

きのう今年のノーベル文学賞がカズオ・イシグロに決まったというしらせをきいて、あまりにもびっくりして声が出てしまった。 もちろんカズオ・イシグロはいうまでもなく優れた作家であることはわかっていたのだけれども、2年連続英語圏の受賞ではないだろう…

「回遊人(吉村萬壱)」感想/死者の居場所

回遊人 (文芸書) posted with ヨメレバ 吉村萬壱 徳間書店 2017-09-26 Amazonで見る Kindleで見る 彼女の夫の居る時空と私が居るこの時空とは、何がどう違うのだろうか。私は一体、本当はどこにいるのか。確かな事は、女将の夫は既に死んだという事だ。その…

温又柔「真ん中の子どもたち」感想/「アイデンティティの安全」を生きるわたしたちの無自覚な暴力

第157回芥川賞の選評が公開された。 文藝春秋 2017年 09 月号 [雑誌] posted with ヨメレバ 文藝春秋 2017-08-10 Amazon Kindle 芥川賞の特殊なところはなによりもその影響力なのだけれど、それ以外にも「選考委員全員が現役作家」というものもある。選考委…

「囚われの島(谷崎由依)」感想/強迫観念と寓意、物語という感覚器官

囚われの島 posted with ヨメレバ 谷崎由依 河出書房新社 2017-06-12 Amazonで見る Kindleで見る 時間の感覚、そして空間の感覚。 見えなくなるにつれて、わたしはわたしの内側に世界の地図を記録しはじめる。 平面のそれではなく、絵ではなく、世界そのもの…

「ヒドゥン・オーサーズ(惑星と口笛ブックス)」についての雑感/自由と不自由は相反しない

このブログで何度も宣伝してきた「ヒドゥン・オーサーズ」という電子書籍アンソロジーが発売されてもうじき3ヶ月になる。 小説を書きはじめたのは23歳の夏くらいで、はじめはネットの小説投稿サイトでちらほら短編を書いていて、それが気がつけば文学賞に応…

英語で小説を読みたいひとが知っておくと便利なことをまとめてみたよ!

ぼくは海外の小説がすきなのだけれど、しかし小説読者の大半はおそらく翻訳された小説に読みにくさをかんじている。すくなくとも、ぼくがこれまでに会って話をしたひとのほとんどが「洋モノは苦手」だといっていて、翻訳がよくないとかそんなことをいってい…

【感想】大前粟生「のけものどもの(惑星と口笛ブックス)」/小説を読む瞬間にしか現れない物語

小説を読まなければ読めない小説がある、ということをよくかんがえる。小説は物質的な範疇でいってしまえば「単なる文字の配列」でしかないし、だからこそ言語さえ身につけてしまえばかんたんに読めてしまえるはずだ。しかし、事実としてとくていのひとにと…

無機質なものとしての生命、人間依存しない知性/「BLAME!」「横浜駅SF」について

毎週水曜日はシネリーブル神戸が安いので、午前中に映画「BLAME!」を観てきた。 原作は弐瓶勉のマンガ作品であるのだけれど、その個性の強さゆえに一般性は低い。「ハードSF」と呼ばれるように非常に重厚で煩雑な設定を持った世界観であるにもかかわらず、作…

伏見つかさ「俺妹」→「エロマンガ先生」の発展がなぜ素晴らしいか真剣に考えてみた。

※このエントリーには伏見つかさによるライトノベル作品「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「エロマンガ先生」の一部ネタバレを含みます。 お兄ちゃんのバカ! 変態! ラノベ主人公〜! でおなじみのエロマンガ先生がおもしろい。今期でぶっちぎりで好きな…

平野啓一郎「マチネの終わりに」を120%楽しむために、演奏されていたギター曲を解説するよ!

マチネの終わりに[Kindle版] posted with ヨメレバ 平野啓一郎 コルク 2016-04-08 Kindleで見る Amazon[書籍版]で見る 平野啓一郎のベストセラー「マチネの終わりに」を読んだ。 この本はクラシックギタリストと女性ジャーナリストの「切ない恋愛」を題材と…

「サイコパス」を知ることの意味/【悪の教典】【コンビニ人間】に見る「社会」と「狂い」の軋り

※映画「悪の教典」より 高校生ぐらいのときから、心理学というもの全般に胡散臭いイメージを抱いている。 とは言っても、ぼくはこの学問分野を否定したいわけじゃなく、あくまで個人的に釈然としないことが多いという、それだけの印象から思っているにすぎな…

うんこ作家が紹介する野糞本がやばすぎて凄まじくおもしろいってことをみんなに伝えたい。

今月の文芸誌「すばる」にて、うんこ作家の木下古栗が書評を書いていた。4冊くらいまとめて紹介していたのだけれど、どれもこれもかれの作風を象徴するような選書で非常におもしろかった。 すばる2017年5月号 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2017/04/06 …

川上未映子「シャンデリア」感想/わたしじゃない他者のすべてに思考が宿っているということ

シャンデリア (Kindle Single)[Kindle版] posted with ヨメレバ 川上 未映子 2017-01-11 Kindleで見る シャンデリアが落下する瞬間 ─ ─ きっとその瞬間にわたしはどこ にいたってその真下にいるはずで、わたしは目を見開いて、ものすごく見開いて、その落下…

最近のライトノベルで作家・作家志望の主人公が増えているのはなぜなのか?

2017年春アニメをちらほら見ていて、だいたい見るものを7,8本くらいに絞ったのだけれど、そのリストを見てみると「作家・作家志望」が主人公(または主要な人物)であるものが3つあった。 冴えない彼女の育てかた♭ エロマンガ先生 Re:CREATORS 月がきれい …

原作ラノベ「ノーゲーム・ノーライフ」を読んで劇場版・アニメ続編に備えた件

※このエントリーにはライトノベル作品「ノーゲーム・ノーライフ」の内容に言及する箇所がありますが、核心部のネタバレはしないように頑張りました。 好きなアニメであって、そして2期をずっと待っているのに一向に放映されない作品「ノーゲーム・ノーライ…

本屋大賞は超信じられるのか?読書ジプシーが信じられる文学賞ってなに?

さっき、2017年本屋大賞が発表されて恩田陸「蜜蜂と遠雷」が受賞した。 直木賞との二冠達成である。 蜜蜂と遠雷 posted with ヨメレバ 恩田 陸 幻冬舎 2016-09-23 Amazonで探す Kindleで探す 受賞作については以下の記事ですでにレビューを書いている。 ■第1…