カプリスのかたちをしたアラベスク

このブログはフィクションです。詳しくはプロフィール参照。

【最近のできごと】

文学ムック「たべるのがおそい」の編集などを手がける西崎憲主宰の電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」より
ぼくの初の単著となる短編集「コロニアルタイム」が発売されました。

また同レーベルより発売中のアンソロジー
「ヒドゥン・オーサーズ」

にも短編を寄稿しています。
この本は新潮社が発行している雑誌「波 2017年7月号」で
王様のブランチでおなじみの書評家・滝井朝世さんにも取り上げていただいています。


久留味、フォーエバー・ラヴ

ぐるなびお題「思い出のレストラン」
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/gnavi201503


それはいうまでもなく「久留味」というカレー屋さんだ。ぼくが大学の学部生の時、京都市左京区郵便局の裏にあった、大盛りカレーで有名なお店で、ふつうのカレーで2合近く、中ジャンボカレーで3合あった。で、ジャンボカレーはというと、これは「とんかつ中ジャンボカレー(通称とん中)」を続けて2皿完食できたものにだけオーダーが許される。お米の量はなんと

一升!

その姿はまるで富士山の如き優美さと力強さを兼ね揃え、凛として客の前に立つ。ニーチェはいった。あなたが闇を見つめる時、闇もまたあなたを見つめているのだと。スプーン片手にジャンボカレーを見つめるフードファイターもまた、ジャンボカレーに見つめられているのだ。幾度となく洗われ鈍く光るスプーンのような眼差しで……。



というのはさておき、ぼくはこの店にフードファイターとして出入りしていたのではなく、単に安く腹がいっぱいになれるという理由だった。カレー並盛りは1皿450円、これは決して安くはないが、これはカレーチケットを買うことにより破格の値段となる。

カレーチケット1冊は4000円で購入でき、それには「ガッちゃんマーク」と呼ばれるマスコットの絵の下、450円分の食券が10枚ついている。そして、こなカレーチケットをまとめ買いすると、さらにおまけがつく。たしか、以下のような感じ。

3冊購入→1冊おまけ
5冊購入→3冊おまけ
7冊購入→8冊おまけ
10冊購入→12冊おまけ

いうまでもないが、あきらかにおかしい。7冊以上買うと、おまけと有料分の冊数の大小が逆転する。そしてさらに、チケットの頭にあるガッちゃんマークを10枚集めるとカレーチケット1冊がサービスでもらえる。つまり、10冊購入すると24冊手に入るのと同じ。驚きのカレー並盛240杯、とん中なら120杯である。

240杯分のカレーを40,000円で購入できると考えると、カレー並の単価は167円!学食より安く、ぼくは学部生のとき死ぬほどカレーをくっていた。マスターと仲良くなって、ズームインの大盛りの店特集のときも招集してもらった。唐突にコンビニにいくといったマスターに店番を任されたりもした。


…しかし「久留味」はもうない。最後の方は募金も募っていた。そこに多くの小銭がはいっていたことがいかに愛されていたかを小銭のきしる音が語ってくれた。しかし惜しまれながらもぼくが大学院生になるタイミングで、久留味は閉店した。

のちに、「閑古鳥」という何故その名前にしたのか謎すぎる鉄板焼き屋さんになっていた。一瞬で潰れて、空き家になっていた。