カプリスのかたちをしたアラベスク

このブログはフィクションです。詳しくはプロフィール参照。

【最近のできごと】

文学ムック「たべるのがおそい」の編集などを手がける西崎憲主宰の電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」より
ぼくの初の単著となる短編集「コロニアルタイム」が発売されました。

また同レーベルより発売中のアンソロジー
「ヒドゥン・オーサーズ」

にも短編を寄稿しています。
この本は新潮社が発行している雑誌「波 2017年7月号」で
王様のブランチでおなじみの書評家・滝井朝世さんにも取り上げていただいています。


【作家志望のひと向け】純文学5大文芸誌の文学新人賞についてまとめてみたよ!

f:id:bibibi-sasa-1205:20180602172625p:plain

 

さいきん、このブログの読者さんも増えてとてもうれしい。
今回のエントリーは「ぼくは小説を書いてる」ってことの自己紹介になればうれしいです。

ぼくは同人誌「らくせん」というものの編集長をして、文学フリマに参加したりしたことがある。そのせいか、公募しているいわゆる純文学系の文学新人賞の情報や応募作品、最終候補作品がぽろぽろと手元にやってきたりする。
だいたい作品を送ってくれるのはぼくとかなり仲良しなひとで、かつぼくがこのひとはいつかデビューするんだろうなってかんじのひとばかりで、ぶっちゃけ「どうして落ちたんだろう」とおもうものも中にはある。

正直にいえば、これは新人賞に応募しているひとたちにとって、文章に残したくない話題だけど、めちゃくちゃ気になるっていうひとは多いとおもう。
ぼく自身も、はじめて新人賞に応募したときとかはめっちゃ2ちゃんねるを見たし、小説を書く友だちがちらほら増えて、そのメンバーで飲み会とかすると「最終候補の連絡がくるのは○月×日ごろ」とか、「何次選考に残った」とか、そういう話になったりする。
ぶっちゃけ、何回か応募したらそういうものはほとんど気にならなくはなるのだけれど、しかしそれっていうのは受験のときの模試みたいなモチベーションにはなるっちゃなる。それに、ブログとか見ていると「小説を書いてみたらいいんじゃないかな~」ってかんじるひともちらほらいたりするので、いわゆる「ワナビあるある」ネタとしてこれを書いてみる。といっても、ゴシップネタのようなもんです。

 はぁ……、カルマがたまる……。

(ここから先は香ばしいのでご注意ください!)

目次

純文学5大文芸誌とは?

さて、まずは今回のエントリーで対象とする文学賞を紹介します。
純文学5大文芸誌とは、文藝春秋の「文學界」講談社の「群像」河出書房新社の「文藝」集英社の「すばる」新潮社の「新潮」を指します。どれも多くの大作家を生み出した、現代日本文学の中心的存在となっている文芸誌で、各々が主催する新人賞も超人気。
たとえば文學界新人賞では石原慎太郎を、群像新人文学賞ではW村上(村上龍、村上春樹)や今回芥川賞を受賞された村田沙耶香を、文藝は綿矢りさ、すばるでは金原ひとみ、新潮では芥川賞の「不機嫌会見」で時の人となった田中慎弥などの著名な作家を排出しています。 

選考過程は?

応募数はだいたい1500~2000ぐらいで、そのうち受賞するのは1、2名。倍率でいえば1000を超える難関です。
選考委員はどの賞も、現在第一線で活躍している作家が5人ほどいるといった感じですが、上述のとおり応募作は2000ほどあるので、かれらが全作を読むということはありません。選考委員は最終候補のおよそ5作だけを読み、選考会で議論し、受賞作を決めるという流れです。
まず最終候補を決めるまでに何段階かの予備選考があるのですが、応募者としてまぁまぁ重要なのは、たとえ落選しても自作がどこまで残ったのか、ということです。
選考過程で予備選考を通過した作品と作者の名前は、たいてい文芸誌上で発表されます。どの文学賞も1次選考(文學界では2次選考)を通過するとめでたく名前が載るのですが、その数はだいたい80作品くらいです。全体が2000だとすると、「上位4%」ぐらいになるというところですね。
正直なところ、小説はテストみたいに明確な加点ポイントがないので、あまり「上位」とも言いにくいのですが、それでも名前が載るとうれしいものです。
ぼくは3年ほど前に文學界新人賞に応募した作品が3次選考を通過したことがあるのですが、(こんなことうれしいなんておもっちゃダメだ…!)とおもいつつもうれしかったです。名前が載ってるだけじゃなくその頭に○印がついている。
でもなんでうれしいかって、そもそも文学賞に応募するとき、その応募数の多さからじぶんの小説が読まれるなんていう実感が全然わきません。この前群像新人文学賞を受賞した崔実さんも受賞コメントで「新人賞はブラックホール」と書いていたのですが、まさにそんなかんじ。名前が載ってる、ということは「えっ!うそ!まじで読まれてんの!?」ということにとにかく感動します。
結果はだめだったけれど、やっぱり自作を読んでくれるひとがいて、それを評価してくれたひとがいた、ということはほんとうにうれしいことです。 

各新人賞について

では、独断と偏見による各新人賞の特徴について見ていきましょう。

文學界新人賞

文藝春秋|雑誌|文學界_文學界新人賞原稿募集

選考委員(2018年現在):東浩紀 円城塔 川上未映子 長嶋有 綿矢りさ

9月末締め切りで(むかしは6月末と12月末の年2回だったんだけどなぁ)、特徴は既定枚数の短さです。400字詰原稿用紙70枚~150枚ですので、その気になれば1週間ほどで書ける分量です。

ちなみに、ぼくが応募して3次選考を通過した小説はnoteで公開にています。特に新人賞に挑戦してみよう!という方はそちらもよかったら参考にしてみてください。

内容は一年に一回、住民が名前を付け替える村で、過去の自分や他人のことを一人称現在で語るおじいさんなどのお話です。序盤は平易なのですが、第2章以降で「語り」や「文体」のコンセプトを過剰に展開させています。このタイプの小説は純文学系の新人賞で予選通過しやすい傾向がありました(当社比)。

むらにつもるこえ|まちゃひこ/大滝瓶太|note

過去の選評を見る限り「客観的に文学の議論が成り立つような作品」が相対的に高い評価を得られやすい文学賞に感じられます。かつての選考委員2名(松浦理英子、吉田修一)は、わりと好き嫌い決め打ち型の選評が多いので、ここに嫌われるとしんどそう。文体や構造をきっちり練ってきた作品と相性が良いのではないでしょうか(ハナホジ

※追記:文學界新人賞では2018年から選考委員が円城塔・川上未映子・綿矢りさ・東浩紀・長嶋有になります。

ただ、文學界新人賞は「相対評価で高いもの」感がすごくて、いいなぁという受賞作がないあたり、個人的に不満です。
また「芥川賞の登竜門」などと呼ばれることもままあって、2017年の受賞作「影裏(沼田真佑)」は文學界新人賞だけでなく、芥川賞も受賞するという石原慎太郎コースを歩みました。

 

過去の受賞作では吉村萬壱の「クチュクチュバーン」が好きです。色んな意味でぐちゃぐちゃな小説ですが、もう作家性が前面に押し出されているのがとても好きです。

 

 

あとは円城塔の「オブ・ザ・ベースボール」

 

は押さえておきたいところです。 

群像新人文学賞

群像

選考委員(2018年現在):柴崎友香 野崎歓 高橋源一郎 松浦理英子 多和田葉子

10月末締め切りで枚数は70枚以上250枚以下。

けっこう「気が狂った」ような小説メタ構造などを取り入れた技巧的な作品が受賞しているなぁという印象があります。
ただぼくはこの賞について、個人的にとある大御所選考委員(※2018年現在では選考委員をしていません)の選評が嫌いすぎて、近年はあんまりこの賞を信頼していないかんじです。
ただ、「ジニのパズル」は良い面も悪い面も含めて、よい受賞作だったとおもいます。

 

 

一番好きな受賞作は、1作だけで消えてしまった丸岡大介の「カメレオン狂のための戦争学習帳」。このときの群像はほんとうによかった。ぼくの知っている群像に戻ってきてほしい。

 

 

のこり3つの文学賞はいづれも3月末締め切りです。

文藝賞

文藝|文藝賞原稿募集|河出書房新社

選考委員(2018年現在):磯崎憲一郎 斎藤美奈子 町田康 村田沙耶香

 既定枚数は100枚~400枚と、大作の応募も可能な文学賞。

そしてカジュアルでポップな作品が多数受賞しているなぁとおもいます。特にその展開は綿矢りさの「インストール」、山崎ナオコーラの「人のセックスを笑うな」はその王道といえるでしょう。 

 

ここも選考委員がよく変わっているのですが、近年は保坂和志的な雰囲気が強いかんじがあり、ちゃんとした小説のようでいて、どこか小説らしくない小説みたいなのが高く評価されている気がします。もちろん、あくまで雰囲気で適当にぼくがいっているだけですので、こんなことを信じているようでは絶対に受賞できません!

※追加 2018年より保坂和志と藤沢周が選考委員を降り、磯崎憲一郎と村田沙耶香が入りました。

ちなみにぼくの友だちの町屋良平が「青が破れる」という作品で受賞しました。この作品は上に挙げた二作にちかい色合いです。 

 

そしてその翌年2017年に受賞した若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」という小説が芥川賞も受賞しました。この小説は東北弁と標準語が自身の体のなかに存在しているという感覚を徹底して書かれた思弁的で構造的な小説でありながら、「田舎育ちの老女の東京でのひとりぐらし」というリアリズム小説としても高い評価を受けています。

業界からの評価も高く、要チェックの作品と言えるのではないでしょうか。

 

 

個人的に過去作品で好きなものは、桜井晴也の「世界泥棒」。これよりすごい新人の小説は読んだことがないです。すばらしい。

 

すばる文学賞

| 第40回すばる文学賞原稿募集 | すばる - 集英社 |

選考委員(2018年現在):江國香織 奥泉光 角田光代 高橋源一郎 堀江敏幸

既定枚数は100枚~300枚。

江國香織や高橋源一郎など選考委員の華やかさと、受賞賞金100万円(他の文学賞の倍!)なのが特徴です。

また、ここは応募総数が1000~1200と、他の文学賞より若干少なめなのも、知る人ぞ知る特徴です。でも、あんまり難易度はかわらないとおもうけど。

過去の受賞作で記憶に残っているのは澤西祐典「フラミンゴの村」

 

あとは芥川賞受賞作にもなった「蛇にピアス」

 

新潮新人賞
 新潮新人賞 | 新潮社

選考委員(2018年現在):大澤信亮 川上未映子 鴻巣友季子 田中慎弥 中村文則

 既定枚数は250枚以下(短編可)。

この賞はひとことでいうと「硬派」。
とにかく、文章の密度が高い作品が受賞しているように感じます。なんというか、緻密に文章をよどみなく書き続けられる力量が、この賞の突破口になるかもしれません。よう知らんけど。
出てきたときにおおっとおもったのは小山田浩子の「工場」滝口悠生の「楽器」ですね。

 

 ※受賞作「楽器」が収録されています。

 さて、2017年には2作が同時受賞しましたが、そのうちの1作である石井遊佳「百年泥」が上述の「おらおらでひとりいぐも」と共に、芥川賞も受賞しました。新人賞受賞作が芥川賞も同時受賞するというのは極めて異例といえますので、ご興味のある方は両方とも読んでみてはいかがでしょうか?

 

まとめ

ざっと純文学系の新人賞をながめてみましたが、どこか応募したい賞はあったでしょうか?ぼくはぜんぶに応募したいです(必死)
個人的には、ここ3年ほど小説を書けていないので「らくせん」すらできていない始末。そのじたいにとてもあせってはいるのですが、まぁ気長にやろうかなぁと。

あと、作家さんに話を聞くと、多くの方が口をそろえて言うのは、

「小説書いて一番うれしかった瞬間は、最終候補の電話がかかってきたとき」

らしいです。そのとき、はじめてじぶんと縁のなかった世界とつながりができたという、世界の膨張感がたまらんとのことです。

 最後に、いちばんいいたいことを。

傾向なんて関係ない。

いいものが受賞する。

それが世界の理!

 それが信じられなくなったらもうおわりです。

おまけ1:新人賞についての本

巷にはこういう本も出ていますので、新人賞にこだわりたい人は目を通しておいてもいいかもしれません。電子書籍でも読めるやつがあるので便利な世の中になったなって思います。

 

「読んだら負け」感が やばいですが、自己判断で手に取ってみてください。 

おまけ2:創作のためにたくさん本を読みたいひと向け

小説を書くにはやっぱり「小説を読むこと」が一番の勉強になると思いますが、Kindle Unlimitedの読み放題はおすすめです。

Kindle Unlmitedや「電子書籍ってぶっちゃけどうなの?」的なことを以下の記事でまとめていますのでご参考にしてくだされば幸いです。

www.waka-macha.com

 

また、「英語で小説を読みたい!」という方にも電子書籍は有効です。それも以下の記事でまとめていますので、ぜひお読みください。

www.waka-macha.com

おまけ3:小説に集中するために在宅で働きたい人向け

そういえば、

「小説に集中するために在宅の仕事をやりたい!」

という声を少なからず 聞きます。

ですので、一応在宅でフリーライターをやっているぼくが、それをやるためにはどうしたらいいかを書いてみました。

在宅やノマドワークのはじめかたをまとめてます。

www.waka-macha.com

www.macha-job.com

 

長くなりましたが、以上です。

ありがとうございました。