カプリスのかたちをしたアラベスク

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【最近のできごと】

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最近のライトノベルで作家・作家志望の主人公が増えているのはなぜなのか?

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2017年春アニメをちらほら見ていて、だいたい見るものを7,8本くらいに絞ったのだけれど、そのリストを見てみると「作家・作家志望」が主人公(または主要な人物)であるものが3つあった。

  • 冴えない彼女の育てかた♭
  • エロマンガ先生
  • Re:CREATORS
  • 月がきれい

そこでふとおもったのだけど、なぜ最近はこのタイプの作品が多くなったんだろう。なぜみんな創作するのだろう?

いや、そもそも多くなっているかどうかなんてぼくの体感でしかないのだけれど(そしてそれを定量的に比較して事実確認する根気はないのだけれど)、これはなんらかの理由があるようにおもわれる。そしてこの傾向はライトノベルに強い(もちろん体感)。

というわけで、今日は

「主人公が創作にかかわる作品が増えているのだとしたら、その要因としてありえるものはなんだろう」

という話をしようとおもう。最初に断っておくと、厳密な話をするつもりはない。

 

目次

 

出版状況におけるライトノベルの位置づけ

まず日本の出版部数の推移と、そのなかでもライトノベルの出版部数の推移のデータを拾ってきたのでそれを見てみる(ちょっと古いけれども許して)。

 

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引用元:ライトノベル市場の現状分析

 

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引用元:ライトノベル市場の現

 

これをみると、出版物全体の部数は減少傾向にあるのに対し、ライトノベルの出版部数はほぼ毎年増加しているらしい。

さらにライトノベルについてレーベル数などを見てみたのが以下の図になるらしい。

 

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引用元:ライトノベル市場

 

この図が示すのは、ライトノベルという市場における競争の激しさであり、それは年々激化している。

つまりライトノベルの需要と供給は年々規模を広げており、出版不況と呼ばれるほかのジャンルとはまったくちがう市場であるといえる。

それにはもちろんアニメ化を代表するメディアミックスにより本来読書をしない層への訴求が効果的におこなえているということもあるだろう。

 

ここで話を本題に戻し、以上のことを踏まえるとこう考えることもできるだろう。

「ライトノベル市場の拡大は、ライトノベル作品になんらかの影響を与えたのだろうか?」

ぼくはそれが「イエス」だとおもっている。

ここでぼくが考えている仮説みたいなものを明言しておくと、

「創作が日常的な行為として認知されるようになったから」

というものだ。

 

作家志望者は「潜在的」にめちゃくちゃ多い

「作家になりたい」

一度でもそうおもったことのあるひとはけっこう多い、なんて話はしょっちゅう聞く。

ぼくも小説を書いているけれども、そういう会話の流れでそういう話をすると「おれも書いてみようとおもったことはあるんだよねー」ということばがかえってくるのはめずらしくもなんともない。もちろん、むこうが気を使ってくれただけかもしれないのだけれども。

ちなみに先ほどから参考にしている資料にもライトノベル新人賞応募数推移のデータがあるのでちょっと引っ張ってみる。

 

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引用元:ライトノベル市場

 

これもライトノベル出版部数にほぼ比例して増加傾向にある。作家になるルートとしてもっとも一般的なのはたしかに「新人賞」だ。

しかし近年では、「小説家になろう」や「カクヨム」などのWEB小説公開サイトから出版社の「青田刈りデビュー」というケースが増えている。この流れはけっこう大きな変化なんじゃないかなっておもう。

 

小説投稿サイトがもたらしたもの

話を少しだけ戻すと「むかし小説を書いてみようとおもったひとが多い」ということが事実ならば、「小説を書こうぜキャンペーン」的なものを効果的にすればおそらく書き手の数はもっともっと増える。しかしなぜ実際に小説を書かないかといえば、それこそ理由は無数にあるけれども、単純に「小説を終わらせることができないから」というものがあるようにおもう。

よくいわれることだけれども、小説でいちばんむずかしいことは設定やプロットを練ることでもなければ文体をつくりあげることでもない。「小説を完結させる」ことこそ一番むずかしく、ひとによってはその力を「書く才能」と呼ぶ作家さえいる。

そして「小説を書こう!」という意思をもったひとは、けっこう処女作を壮大なものにしたいという大きな野望を持っているケースが多い。ハードルをじぶんでめちゃくちゃ上げる、という感じだろうか。そしてそのハードルを超えられず、書いた文章のおもんなさに絶望してそのまま原稿を投げ出して筆を折ってしまうというケースを、ぼくはこれまでに幾度となく見てきた。実にもったいない話である。

そして新人賞というのは「応募枚数が300枚程度」であることが多い。初心者にとってその尺を書き、かつ物語を完結させるのははっきりいってめちゃくちゃムズい。作家になることを前提とした創作活動というのは、つまりそもそもハードルが高かったわけだ。作家になることを前提にすると、限られた創作時間のほとんどは応募作の制作へと必然的にあてがわれ、かつ「完成できなければ」その意欲は一気に削がれてしまう。なので、「継続的に小説を書く」というモチベーションを保てる者はちょっと頭がおかしいくらいだった。

 

しかし「小説投稿サイト」は原稿用紙1枚の小説でもかまわず投稿できる。この敷居の低さは「物語を完結させる」という小説を書く上でもっとも重要なポイントに目を向けやすくしてくれている。そして「潜在作家志望」を実際に行動させるよいきっかけになっている。「小説投稿サイトがあったから小説を書きはじめた」という層も少なくないのではないだろうか?

もちろんこのサービスはけっこう前からあったと記憶しているのだけれど、そこは作家志望のみならず、ただ小説を書くのが好きな人、あるいは「読み専」もいた。もちろんいまもいる。

これらのサービスを使う理由はいうまでもなく

「自作を読んでもらうため」

だと断言してもいいだろう。しかし、小説投稿サイトで自作を公開しても読者はすぐにはつかない。そこで読者を獲得するてっとりばやい方法がある。それは、

「他の投稿者の作品に感想をつける」

ことである。

はっきりいって、作品の評価を受ける以前に、「そもそも読まれるのか」というところがWEB小説だけでなく「本を売る」という商売のすべてにかかわる根本的な問題だろうとぼくは考える。「無名のだれかの書いた小説」を読むひとなんてかなりの物好きだ、といわれてもその気持ちはめちゃくちゃわかる。その「どこぞのだれかの書き散らかし」を読んでくれるのは「コミュニケーションを求めた同業者」だ。存在をまずは認知してもらい、そしてコメントがいくらかつけば、第三者が読んでくれるしコメントをつけてくれる。このようにして投稿サイト内での読者は拡大していく。

そして「小説投稿サイトのWEB小説が書籍化する」という”事件”が起こることで、たぶんそのユーザーは爆発的に増えたんじゃないか?

これはほんとに妄想でしかないのだけれど、「小説家になろう」のサイト全体のアクセス数推移などは見てみたい。

 

長々と脱線したけれども、ようするに「小説投稿サイト」は、

  • 「潜在作家志望」が実作するハードルをガン下げした。
  • ユーザー間でのコミュニケーションを促し、そのコミュニケーションを駆動力にして規模を拡大した

という二点と、

  • 新人賞を経由しないプロデビュー経路の開拓

によって、

小説の実作者数を底上げした

という意味で、大きな役割を果たしているのだとおもう。

(まぁ、確認はとれてないから妄想なんだけどね……)

 

で、実作者数と「主人公」がどう関係あるの?

めちゃくちゃ脱線したけれども、話を本題に戻す(今度こそ……!)。

まず誤解が生まれそうなので最初に断っておくと、

「小説投稿サイト発の作家・作家志望が主要人物のヒット作」というのはたぶんない。

ライトノベルに詳しいわけじゃないからいいきれないけれども、こういった主人公を置いた作品はだいたいすでにキャリアがあるひとか、新人賞の作品だったとおもう。

ちなみに「犬とハサミは使いよう」 第12回エンターブレインえんため大賞小説部門の優秀賞受賞作品だ。

 

 

「小説投稿サイトが台頭→作家・作家志望が主要キャラの作品増えた」

なんていうと、小説投稿サイト内でそういった作品が増えたという風にならないとおかしい気がするけれども、ぼくがしたい話はそんな直接的なものじゃない。重要なのは、

「小説投稿サイトが台頭→作家志望者の絶対数が増えた」

というところにある。このことは

「これまでに縁遠いものであった”創作”が、読者にとって身近なものになった」

ということになるんじゃないかなってぼくはおもう。特にエンタメを志向した作品だと、キャラクターに感情移入できるかどうかという点がけっこう重視されがちなのだけれど、実作者が増えることによって「創作あるある」が有効なものになってきた。

あと、この話はなにも小説投稿サイトだけじゃない。コミケなどの同人即売会が注目をますます上げているということ、「オタク」が市民権を得る様になってきたことも同様の効果を出している。

結論をいうと、

ここ数年で「ものをつくることが日常化した」証拠として創作する主人公が増えてきている

のだとぼくはおもう。ものをつくるのってたのしいよね!

出版不況の打開策なんてたいそうなものを考えるつもりはないけれども、「つくること」がより身近になれば出版市場は良い方向にいくんじゃないかなって。

きょうはそんなことをぼんやりとおもった。おしまい。

 

新人賞についての記事↓

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