カプリスのかたちをしたアラベスク

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【最近のできごと】

2018.10 昨年刊行した電子書籍短篇集『コロニアルタイム(惑星と口笛ブックス)』第39回日本SF大賞にご推薦いただきました。

2018.10 短編小説『誘い笑い』を文学ムック『たべるのがおそいvol.6(書肆侃侃房)』に寄稿しました。

2018.8 掌編小説「青は藍より藍より青」第1回阿波しらさぎ文学賞を受賞しました。

読書

名倉編「異セカイ系」書評/「ひとりずもう」とそのやさしさ

さくらももこのエッセイ漫画「ひとりずもう」には彼女が漫画家になる前のことが描かれている。静岡で、家族にもなかば呆れられながら漫画家になる未来を信じて漫画を描き、「りぼん」に投稿していた高校の終わりから短大時代のエピソードがとても印象に残っ…

柴崎友香『公園へ行かないか? 火曜日に』書評/今年はこれを読めたらかもう問題ない。

先日、ピッツバーグで銃乱射事件が起こり、11人の犠牲者が出た。テレビのニュースでそれを知った。ユダヤ教礼拝所に男がやってきて発砲し、拘束時にはユダヤ人排斥の罵倒を繰り返していたと報じられていた。2012年の春から夏にかけての5ヶ月間、ぼくはこのピ…

山本ゆり『スターバックスで普通のコーヒーを頼む人を尊敬する件』/前職の会社のこと

料理本を多数出している料理ブロガーの山本ゆりさんからTwitterでDMをいただいた。 ameblo.jp 実は山本さんの前職というのがぼくが務めていた会社とおなじであり、そのことをツイートしたのがきっかけだった。ぼくは山本さんとおなじ86年生まれなのだけれど…

こだま『ここは、おしまいの地』書評/ドラマティックの行方

何もない集落に生まれたことも、田舎者丸出しのなりふり構わない暮らしも、大人になってそれを隠しながら生きていたことも、教員を続けられなかったことも、病気も、経験してきた数々の恥ずかしい出来事すべてが書くことに繋がるのなら、それでいいじゃない…

地続きの異世界を目指して──現実と虚構の濃度、その位置関係をめぐる金子薫試論

結末を決めてから書き始めたわけではなかったが、本間にとってモイパラシアとは、その純粋さが昂じて死に魅せられることはあっても、必ずや生の側に踏みとどまり、何があろうと懸命に生きてゆくことを望むような少年であった。 ところが、かつて本間がその身…

紗倉まな『春、死なん』(群像2018年10月号)感想/奪われた死に場所

近況『たべるのがおそいvol.6』掲載 たべるのがおそいvol.6(書肆侃侃房)に『誘い笑い』という原稿用紙30枚ほどの短編小説を掲載していただきました。 文学ムック たべるのがおそい vol.6 posted with ヨメレバ 谷崎 由依,酉島 伝法,佐藤 究,深緑 野分,林 …

「メルヘン翁」をもう一度/さくらももこ『もものかんづめ』書評

祖父が死んだのは私が高二の時である。 祖父は全くろくでもないジジィであった。ズルくてイジワルで怠け者で、嫁イビリはするし、母も私も姉も散々な目に遭った。 さくらももこ『もものかんづめ』収録、「メルヘン翁」 妻はマンガこそ大量に読むが、活字はま…

WEBメディアで小説を公開することについて/小説『娘のトースト(狩野ワカ)』書評

妻の高校時代の友人が、卒業して何年か経ったのち自身がゲイであることを仲間に告白したという。そのとき妻らは、「は?」といった。そしてこう続けた。「なにをいまさら。高校のときからしっとったで」 いわゆるLGBTについて、良くも悪くも非常に多く見かけ…

遠い世界からことばが届くまで──澤西祐典『文字の消息』

2011年3月11日、東日本大震災が発生した瞬間、ぼくは淡路島の実家にいた。バラエティ番組の再放送を家族と見ていて、その上部に震災速報が映し出された。実家は阪神大震災のときに震源のほぼ真上にあったのもあり両親や祖母は地震には敏感で、震度やマグニチ…

「作家になる」とはどういうことか?──マンガ「ものするひと(オカヤイヅミ)」

「ぼくも小説、書いてみたいんですよ」 飲み屋かなにかでたまたま話すことになった男性にこう言われたある作家はこう返したという。「じゃあ、あなたが持っているそのiPhoneで今から書き始めたらいいじゃないですか」 今日の話は、いってしまえばこのやりと…

読書のことを「インプット」とかいっちゃう連中は眼から血が出るまで読み返せ──乗代雄介『生き方の問題』(群像2018年6月号)

※このエントリーには乗代雄介『生き方の問題』のネタバレが含まれています 一つ口惜しいのは、貴方が覚えていて僕が覚えていなかったことを、今は書くわけにはいかないということだ。それらは一年前に貴方が僕に話してくれた出来事として、左に無限に続く余…

ぼくらがセックスできなければ結婚していただろうか?──こだま『夫のちんぽが入らない』書評

※このエントリーにはこだま『夫のちんぽが入らない』のネタバレを含みます。 昨日の夜、ゴールデンウィークに登山に出かけて遭難してしまった親子が発見されたというニュースをみた。県警のヘリコプターが見つけたそのとき、親子は覆いかぶさるようにして山…

弱い恋愛と絶対化されるアマチュアリズム──町屋良平『しき』(文藝2018年夏号)

もうじきぼく自身が小説を書きはじめて10年くらい経ち、それでもまだたかだか10年程度でしかないとはいえ、いわゆる筆歴がながくなってくると「いつまで小説を書けるんだろう」みたいな疑問がふと脳裏をよぎる。小説を書ける、というのは小説でまともなお金…

「エモい」という記号化された感情とWEBメディアの文章/『でも、ふりかえれば甘ったるく(PAPER PAPER)』

「これエモくないすか?」 ということをいわれ、 「なにそれ?」 と返したのは、たぶん2年か3年かまえのことだったとおもう。 ことばはいつも知らないうちに次々とどこかから生まれ、ある程度パッケージ化された状態で情弱のぼくの手元に届くわけだけれど、…

遠藤周作がセンター試験で出題された思い出とその周辺の話

この一週間で2本、遠藤周作の作品の書評を寄稿した(『海と毒薬』、『沈黙』)。 ■海と毒薬/遠藤周作:あらすじ&書評『<何が>彼らを殺したか』 ■沈黙/遠藤周作:あらすじ&書評「奇跡なきこの世界で我々が考えうること」 遠藤周作で記憶に残っているこ…

ライトノベルのタイトルに使われている単語を統計分析でぶん回してみた(ウォーミングアップ編)

普段は自宅でキーワードライティングとかそういうやつを書く「記事ドカタ」をしているのだけど、「キーワード3つで40字以内でタイトルつけろ!」という注文がめっちゃ多い。 www.waka-macha.com でも、常識的に考えて40字の中に指定情報3つって割合的に多す…

【書評】若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(芥川賞受賞作)/「思考の言語」と「体験と肉声」

※このエントリーには若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」の感想を書いていますが、ネタバレはありません。というか、ネタバレ云々の小説じゃないです。 満二十四歳のときに故郷を離れてかれこれ五十年、日常会話も内なる思考の言葉も標準語で通してきたつ…

大江健三郎と村上春樹はなぜ同じ主題を「書き直し続ける」のか?/オブセッションと〝自己模倣〟

イーヨーにとって、はじめて父親が死ぬということが、自分にもわかる問題になった、ということだったのじゃないか? 確かにイーヨーはきわめて悪かった、悪いふるまいをした、ということではあるんだけれども、と僕はしばらく考えた上で妻に話した。それでも…

電子書籍ってどうよ?Kindle Unlimitedで読めるオススメの小説・ノンフィクションを紹介しながら電子書籍市場の話をするよ!【随時更新】

こんにちはこんばんはおはようございます。まちゃひこです。 今回は「Kindle Unlimited」を中心とした電子書籍のお話です。 電子書籍についての諸々の感想は後述したいと思うのだけれど、ぼく自身はここ1年ほどは電子書籍での購入を増やしている。 小説やノ…

だれも教えてくれない純文学とエンタメ小説(大衆文学)のちがいと、純文学が売れない理由についてあえて考えてみた。

フリーランスで仕事をしていくにあたり「読書」を軸にしようと決めた以上、ぼくはじぶんの読書だけは信じ抜かなくちゃならなくて、それがもしできなくなってしまったならばなにもかもやめなくてはならない。そんなことをよくおもう。ただその一方でじぶん自…

【書評】滝口悠生「高架線」/本当のことと語り手への信頼

でもさ、と私は田村の話を遮った。僕の文通相手はね、本当は存在していないんですよ。いや、あの写真の男……男か、女か、何と言ったらいいかわかんない、僕は男と言ってしまうけれども、あの人はもちろんどこかに実在しているけど、僕が文通をしていた相手は…

【書評】はあちゅう「通りすがりのあなた」/世界とわたしの鬼ごっこ

※本エントリーには、はあちゅうの短編小説集「通りすがりのあなた」のネタバレはありませんのでご安心ください。 通りすがりのあなた posted with ヨメレバ はあちゅう 講談社 2017-09-27 Amazonで見る Kindleで見る 書きにくい書評というのはふたつあって、…

文芸誌を読むということ/おもしろい・おもしろくないを言い切る尊さ

長編を読み切る時間と気力がないのだけれど(その割に実入りが悪い)、いちおう毎日本は読んでるので、きょうは最近読んだ文芸誌の短編・中編の感想を書きたいとおもう。 読んだのは「文藝2017年冬号」「たべるのがおそいvol.4」だ。 文芸 2017年 11 月号 […

「何者でもないわたしたちという誰か」のこと〜ノーベル賞、カズオ・イシグロ、現代世界文学とオートフィクション、母国語至上主義について

きのう今年のノーベル文学賞がカズオ・イシグロに決まったというしらせをきいて、あまりにもびっくりして声が出てしまった。 もちろんカズオ・イシグロはいうまでもなく優れた作家であることはわかっていたのだけれども、2年連続英語圏の受賞ではないだろう…

「回遊人(吉村萬壱)」感想/死者の居場所

回遊人 (文芸書) posted with ヨメレバ 吉村萬壱 徳間書店 2017-09-26 Amazonで見る Kindleで見る 彼女の夫の居る時空と私が居るこの時空とは、何がどう違うのだろうか。私は一体、本当はどこにいるのか。確かな事は、女将の夫は既に死んだという事だ。その…

温又柔「真ん中の子どもたち」感想/「アイデンティティの安全」を生きるわたしたちの無自覚な暴力

第157回芥川賞の選評が公開された。 文藝春秋 2017年 09 月号 [雑誌] posted with ヨメレバ 文藝春秋 2017-08-10 Amazon Kindle 芥川賞の特殊なところはなによりもその影響力なのだけれど、それ以外にも「選考委員全員が現役作家」というものもある。選考委…

「囚われの島(谷崎由依)」感想/強迫観念と寓意、物語という感覚器官

囚われの島 posted with ヨメレバ 谷崎由依 河出書房新社 2017-06-12 Amazonで見る Kindleで見る 時間の感覚、そして空間の感覚。 見えなくなるにつれて、わたしはわたしの内側に世界の地図を記録しはじめる。 平面のそれではなく、絵ではなく、世界そのもの…

「ヒドゥン・オーサーズ(惑星と口笛ブックス)」についての雑感/自由と不自由は相反しない

このブログで何度も宣伝してきた「ヒドゥン・オーサーズ」という電子書籍アンソロジーが発売されてもうじき3ヶ月になる。 小説を書きはじめたのは23歳の夏くらいで、はじめはネットの小説投稿サイトでちらほら短編を書いていて、それが気がつけば文学賞に応…

英語で小説を読みたいひとが知っておくと便利なことをまとめてみたよ!

ぼくは海外の小説がすきなのだけれど、しかし小説読者の大半はおそらく翻訳された小説に読みにくさをかんじている。すくなくとも、ぼくがこれまでに会って話をしたひとのほとんどが「洋モノは苦手」だといっていて、翻訳がよくないとかそんなことをいってい…

【感想】大前粟生「のけものどもの(惑星と口笛ブックス)」/小説を読む瞬間にしか現れない物語

小説を読まなければ読めない小説がある、ということをよくかんがえる。小説は物質的な範疇でいってしまえば「単なる文字の配列」でしかないし、だからこそ言語さえ身につけてしまえばかんたんに読めてしまえるはずだ。しかし、事実としてとくていのひとにと…