カプリスのかたちをしたアラベスク

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【最近のできごと】

2018.10 昨年刊行した電子書籍短篇集『コロニアルタイム(惑星と口笛ブックス)』第39回日本SF大賞にご推薦いただきました。

2018.10 短編小説『誘い笑い』を文学ムック『たべるのがおそいvol.6(書肆侃侃房)』に寄稿しました。

2018.8 掌編小説「青は藍より藍より青」第1回阿波しらさぎ文学賞を受賞しました。

山本ゆり『スターバックスで普通のコーヒーを頼む人を尊敬する件』/前職の会社のこと

 料理本を多数出している料理ブロガーの山本ゆりさんからTwitterDMをいただいた。

ameblo.jp

 実は山本さんの前職というのがぼくが務めていた会社とおなじであり、そのことをツイートしたのがきっかけだった。ぼくは山本さんとおなじ86年生まれなのだけれど、大学院に進学したこともあり在職時期は被っていない。ぼくは20144月に5つ歳下の学部卒のひとたちと一緒に新卒で入社して、その頃にはもう山本さんはいまの仕事をされていた。
 管理職のひとたちは営業研修のときによく山本さんの話をして、「文章にユーモアのある奴だった」「あいつの書く○○(媒体名)の原稿は光っていた」など、故人をしのぶ眼差しをしつつ娘を嫁に出した親のような口調でいっていた。会社のオープンスペースにはsyunkonが置いていて、ぼくが退職するときも「家事をしっかりやれ」という同僚のメッセージとともにこのレシピ本をもらった。

 

 

 みじかいやりとりのなかで懐かしい名前がいくつか出て、山本さんとおなじ営業所にいた先輩のNさん(山本さんが在職時、席がとなりだったらしい)がさいきん痛風になったらしいという話をした。この情報を提供してくれたのは山本さんの同期であり、ぼくが前職で最も仲の良かった(そしていまでもしょっちゅう会う)ミウラだった。
 ぼくが働いていた時、ミウラとNさんは同じチームにいて、双方からお互いの働きぶりについての話をちょくちょくきいていたのだけど、どちらも「営業マンらしい(!?)我の強さ」があるので、正直「どっちもどっちや」とおもっていた。つまり、どちらもいい感じにウザく、いい感じに刺激的な人間だという風に捉えていただきたい。
 元料理人の経歴を持つNさんは家でアンチョビを仕込み、休日には旬で新鮮な食材を求め市場にくり出し、ラーメンが食べたくなったら麺からじぶんで作り、そしてなによりビールを好んだ。定時が過ぎるとシャツのボタンをうえから2個ほど外し、腕まくりをし、椅子の上にあぐらをかく親父スタイルで仕事を続け、仕事がおわるとよく会社近くの居酒屋チェーン店で仕事の話を肴にして飲む。企業戦士であり、食を社内のだれよりも愛するNさんにとって、痛風という事実は受け入れがたいものだったようだ。

「ぜんぜん心当たりがない!」

とNさんはいった。しかしミウラにしてみれば「心当たりしかないやんけ」という感じだったらしく、この点についてはぼくもミウラに全面同意したい。

 

 山本ゆり『スターバックスで普通のコーヒーを頼む人を尊敬する件』は彼女のブログ記事を元にしたエッセイ集で、4章「働くこと」ではこの会社のことが少しだけ出てくる。求人広告の代理店で、社員のほとんどが営業職のせいか、大阪商人的な押しの強い人間が多数在籍していた。ぼくはそこで学歴を使ったキャラ付けを行いみずからのポジションを確保した。
 ぶっちゃけ学歴の話をするのはめちゃくちゃ嫌だったのだけど、それにより学んだことも多く、フリーライターになってそれを痛感した。7年ほど前に、とある作家さんにぼくの小説を読んでもらったことがあるのだけど、このあいだお会いしたときに「むかしに比べてずいぶんひとに開かれた文章になった」というご感想をいただいたが、これはおそらくこの会社での経験でそうなったんじゃないか、とおもう。会社員のときとにかく仕事が嫌だったけれど、ミウラ夫婦がうちに遊びに来てくれたりするたびに当時のことを思い出すと、なんだかんだで充実はしていたのかもしれない。もう2度と営業はやりたくないけど……

はみだしレシピ

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お酒のお供にぴったりの牛すじ煮込み

材料

  • お肉屋さんで安売りしていた国産牛の牛すじ 250グラム
  • にんじん 1本
  • しいたけ 4つ
  • ちっちゃいにんにく 1個
  • チューブの生姜 適当に2回くらいブチュっと出す
  • 糸こんにゃく
  • ネギ 2本
  • 粉末のダシ 1/2袋
  • 水 ガバッと
  • 醤油 水がええ感じの色になるくらい
  • みりん 気持ち程度に
  • 酒 お好みで

作り方

  1. 牛すじを下茹でする。沸騰したお湯に5分くらい茹でる
  2. 牛すじを取り出し、ええ感じの大きさに切る
  3. にんじんをええ感じに乱切りにする。別にいちょう切りでもいいけど。
  4. 沸騰したお湯にもろもろぶっこむ。ネギの青い部分の1本分は細かく切らずに臭み取り要員としてそのままぶっこむ。味付けは子どもも食べれるように薄めに。
  5. 2時間ぐらい弱火で煮込みながら甲子園の4試合目を見る。

うまい。

 「金曜日の原稿チェック」という文章では、特に求人広告の仕事をしていてしんどかった記憶がリアルに蘇る。勤めていた会社は毎週金曜日が入校日で、この日はお昼ごはんを食べることができないほど忙しい。夏休み最後の日が毎週金曜日にやってくるような感じで、入稿時間を1秒でも過ぎると始末書的なものを書くハメになってしまう。

 当然ながら「金曜日にバタバタせんように仕事をしろ!」と言われる。
 しかし、広告を出す/出さないをギリギリまで待って判断したいお客さんがいたり、締め切り直前に制作さんが作ってくれたデザインを気に入らないと言い出したりするお客さんもいたりするので、これがなかなかうまくいかない。これをうまいこと調整するためにはお客さんとの「ニギリ(=グリップ)」が大事で、場当たり的な営業をしてちゃいかんのだよ、と先輩にも教えられたが、そのかれの元にもいうてる間にお客さんからの締め切り直前の理不尽な修正依頼が入って発狂するなども日常茶飯だった。「背景の海の画像がよく見たらしっくりこないんで、オーロラにしてください」とか、締め切り間際に意味不明な電話がかかってきた先輩も……

 会社の電話をとっている間にこれまた携帯にお客さんから連絡が入り、メールを開けば原稿修正依頼がきている……という状況のなか、山本さんのエッセイでも書かれている「クソ原(=クソみたいな原稿)チェック」もやってくる。はっきりいえることだが、ぼくは広告の才能がまったくない。絶無だ。そのことにも気づいていて大して努力もしなかったので、とにかく限られた文字数で最大の情報量を詰め込むという方法を多用していた。たとえば、パン屋さんのアルバイト募集ではこんなかんじ

13hok!女性多数の職場★

未経験者・主婦(夫)・副業大歓迎!

「漢字多すぎ。中国人かよ」

 先日、件のミウラ夫婦と後輩のナカヒーが文学賞受賞祝いも兼ねて遊びにきてくれた。ミウラはぼくがかつて担当していた顧客をかれが現在担当しているといったのだが、「おまえの原稿、ゲロ吐くくらいダサかったんやけど」と苦言を呈した。

 小説の才能と広告の才能は一切関係ないことを願いたい。